妊活ブログ:着床前診断について その2【ながいきや本舗】

不妊カウンセラーマツムラの妊活アドバイス

妊活ブログ:着床前診断について【その2】

こんにちは。神戸の老舗妊活サポート専門ショップ「ながいきや本舗」店長兼不妊カウンセラーのマツムラです。
ようこそ、妊活ブログへ!
今日も最後までお付き合いくださいね。

さて今回は、前回に引き続き、今関心の高い「着床前診断」についてです。

いわゆる「着床前診断」には、「着床前診断(PGD:Preimplantation Genetic Diagnosis」と「着床前スクリーニング(PGS:Preimplantation Genetic Screening)」の二種類あり、前回はPGDの方をご紹介いたしました。

妊活ブログ:着床前診断について【その1】

今回は、もう一つの「PGS」についてお話いたします。

着床前スクリーニング=着床する前に染色体を調べてみること( Preimplantation Genetic Screening PGS)

着床前スクリーニングは、母体年齢や反復流産、体外受精や顕微授精を何度やっても妊娠できないカップルについて、染色体の数的異常がない受精卵を選び出すという方法です。

世界的に、現在実施されている着床前診断の大多数は、こちらの「着床前スクリーニング」が占めています。

カップルに特に異常はなくとも、実は受精卵はかなりの割合で、染色体の数の異常が認められます。これは偶然によるものです。

そして、流産後の染色体検査の結果から、流産の原因はほとんどは染色体の数の異常(トリソミー、三倍体、45,XOなど)ということがわかりました。

つまり、染色体の数の異常がある受精卵を子宮に戻しても、着床してくれないもの、流産してしまうものが殆どなのです。

体外受精や顕微授精を繰り返すこと、流産を繰り返すことは、カップルに多くの負担をかけてしまいます。

なので、流産の一つの原因である、染色体の数の異常がない受精卵を選んで移植をすることで、いたずらに体外受精や顕微授精、そして流産を繰り返すのを避けよう、とするのが、着床前スクリーニングです。

PGSの検査方法

アレイCGH法

受精卵由来のDNAサンプルを正常なDNAサンプルと比較して異常を検出する方法。

23対46本ある染色体すべてについて、トリソミーなどの染色体の数の異常や、不均衡転座などの構造異常を調べます。

費用は受精卵1-5個の検査で12万〜40万円ほと。一度に多くの検体を処理することができないため、費用が高くなります。

FISH法

胚を取り出し、特定の染色体を蛍光色素で染色して異常を識別する検査法。

染色体の特定の部位を検査することができ、染色体の構造異常、数の異常を検出できます。

費用は個数により5〜10万円ほど。

次世代シークエンス(NGS:Next Generation Sequencing)

受精卵由来のすべてのDNAをWGAと呼ばれる方法で何万倍にも増やし、これをコンピューターで解析して、染色体異常の有無を調べる方法で、PGSの検査として主流となりつつあります。

染色体の部分欠失(一部分のみの欠如)の検出やモザイクの検出も可能です。

また、検査の自動化が可能であり、人的ミスが抑制されます。

一度に多数の検体を短時間に処理できるため、費用も割安です。

次世代シークエンス(NGS)の問題点

次世代シークエンス(NGS:Next Generation Sequencing)

NGSで検査の対象となる栄養外胚葉細胞は、将来胎盤となる部分であって胎児となる部分ではないため、NGSで得られる結果は、必ずしも出生後の結果と一致するわけではなく、数パーセントは一致しないと考えられています。

つまり、NSGで正常胚と診断されても、妊娠後に「NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)や羊水染色体検査などを受ける必要はない」と言い切れるわけではないのです。

また、NGSは些細な異常を見逃さないので、モザイク胚も見つけだします。

モザイク胚とは、正常な染色体を持つ細胞と、異常と持つ細胞とが共存している状態ですから、将来健常児の出産につながる胚も含まれている、ということですので、どう扱うか問題が残ります。

お医者様はこんな見方をしますよ

リプロダクションクリニック大阪 松林秀彦先生は、このようにおっしゃっています。

「着床前スクリーニングは必要な検査だと思います。

異常胚を移植しても、赤ちゃんにはならないからです。

異常か正常か判断せずに移植せざるを得ない現状では、繰り返す陰性判定に落ち込み、あるいは妊娠しても流産や化学流産になり、あっと言う間に数ヶ月から1年の時が過ぎ去ります。

もし、正常胚である確率が10%だとしたら、毎月行なっても移植だけで10ヶ月を要しますが、着床前スクリーニングを行っていれば、正常胚1回の移植で済みます。

また、最近日本から発表される英文論文が激減しているように思いますが、これは着床障害や不育の論文を投稿すると、着床前スクリーニングをしていないものは、ほぼ間違いなく門前払いになるからではないかと考えています。

実際、私達のクリニックから投稿した論文も複数その仕打ちに合っています。

正常胚かどうかわからない胚を移植しても、着床障害や不育の原因を明らかにすることはできないという、至極もっともな返事とともにrejectされます。

したがって、着床前スクリーニングは、患者さんからも私達医療者からもぜひとも行いたい必要な検査です。」

(2017-01-22 松林秀彦先生のブログから抜粋

PGSの長所と短所

ただ、やはり着床前スクリーニングも、完璧ではありません。

長所・短所をまとめてみました。

【長所】

  • 母体年齢による着床率低下がみられなくなる
  • 流産の軽減につながる
  • 移植回数を減らせる
  • 移植あたりの妊娠率が向上する
  • 治療期間を短縮できる
  • 異常胚の凍結保存を回避できる

【短所】

  • 胚操作によるダメージが考えられる
  • 結果は100%正確ではない。 (次世代シーケンサー法やアレイCGH法の受精卵の染色体を正確に診断できる確率は97%〜98%。DNA増幅過程でのエラーなどが起こりえるため、診断の間違いの可能性はゼロではない)。
  • 採卵あたりの妊娠率は低下する(胚を選ぶため移植回数が減るから)
  • 妊娠しないこともある
  • 流産することもある
  • 出産の確証はない(PGSを行っても出産率は3分の2)
  • 移植胚がない周期もある
  • 出生前診断とはならない

PGSはどこでやっているの?

今のところPGSについても、どのクリニックでも行っているというわけではありません。

あくまでも特別臨床研究の段階で、実施施設を限定して3年間で300症例の医学的効果を検証し有効性を確認してから、さらに倫理問題なとを議論する、という流れのようです。

(先日、PGSを行ったドクターが、国内では一般患者に行うことができないはずのPGSを行っていたと公表し、日本生殖医学会から生殖医療専門医資格を取り消されたニュースがありました。)

2018年6月29日追記

着床前診断の可否、審査迅速化へ 医療機関の認可簡略化
2018年6月29日 朝日新聞Digital

受精卵の段階で遺伝子や染色体を調べる「着床前診断」の実施を認めるかどうかの審査を、日本産科婦人科学会が迅速化する。
審査が長引き、受けるのをあきらめる患者もいたためだ。

学会のルールでは、着床前診断の対象は、重い遺伝病があったり、染色体異常で流産を繰り返したりした夫婦やカップルに限られる。
診断で異常がなかった受精卵を子宮に戻す。医療機関から申請を受けて学会が一例ずつ審査し、2015年度までの17年間で申請は549件、484件が承認された。

これまでは医療機関の倫理委員会の許可を受けてから、学会に申請させていた。しかし、学会と施設の倫理委で遺伝病の重篤さの考え方が違うなどして、両者で議論になり、審査が長期化することがあった。

今後は、施設からの申請に基づいて学会がまず審査し、その考え方を施設側に示したうえで施設の倫理委にかけて、速やかな審査を目指す。
また、申請ごとに施設の体制が十分かどうかも審査していたが、施設の認可は5年間の更新制として簡略化する。

同学会の苛原稔・倫理委員長は「9~12月は施設認定の審査を集中的に進め、来年には認可された施設から症例を受け付けたい」と話す。

もし着床前診断を希望される場合は、まずは主治医の先生にご相談されるとよいでしょう。

まだまだ一般的ではない着床前診断ですが、なかなかうまくいかない、その原因が分からない場合、それが突破口となる可能性が高いものであり、切望されているカップルも少なくありません。

ただやはり、いろいろな問題があります。PGD(着床前診断)にしてもPGS(着床前スクリーニング)にしても「選ぶ」ことになるからです。

「選ぶ」ということは、大きな決断です。

まず、PGDもPGSも、研究や臨床によりエビデンスはあるものの、100%ではありません。

検査を受けるかどうか迷い、受診後選ぶにあたって迷い、選択後のこれでよかったかと迷い・・・など、いろいろな局面で迷うことが予想されます。

実際にはやってみなければわかりません。どう思うか、考えるかも、予想と実際は違うことが多いです。

その場その場で後悔のない選択をしたい・・・そのためにはまず、当事者であるカップルのお二人の間でじっくり話し合うことが大切だと思います。そして、ドクターや遺伝カウンセラーなどの専門家に相談することもよいでしょう。当事者の主観だけでなく、客観的な意見も大切です。
リンク集
生理の量が少ないと子宮内膜は薄い?
体外受精だけでなく妊娠のチャンスを逃さない
40代も凍結は胚盤胞?それとも初期胚?”

カップルお二人が、自分達にとって納得できる選択をしていっていただきたいと思います。

妊活ブログ:着床前診断について【その1】


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